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福井のソウルフード「越前おろし蕎麦」。その魅力を農業の専門家、With Farmerの2人が深堀りします。
越前おろし蕎麦とは
「越前おろし蕎麦」は、冷たい蕎麦にたっぷりの大根おろしをかけて、出汁と蕎麦の風味を楽しむ逸品だ。福井は在来種蕎麦の全国屈指の名産地であり、福井人にとっては望郷の味と言っても過言ではないだろう。福井のソウルフードである越前おろし蕎麦には、どのような特徴があるのか。お店によってどのような違いがあるのか。
今回は、福井市民が愛して止まない「おろし蕎麦」の世界を少し覗いてみよう。
おろし蕎麦の歴史と特徴
「おろし蕎麦」の歴史は古い。安土桃山時代~江戸時代にかけて、福井藩家老の本多富正公が飢饉にそなえ越前府中で蕎麦栽培を始めた当時から、大根おろしの汁でそばを食す方法が推奨されてきた。今日に至るまで受け継がれてきたおろし蕎麦、最近ではその健康効果に注目が集まっている。
蕎麦には、ポリフェノールの一種であるルチンが豊富に含まれており、毛細血管の強化や血流改善のほか、生活習慣病の予防効果も期待される。このルチンの効果を高めるのが大根おろしに含まれるビタミンCである。同時に摂取すると相乗効果が得られると言われている。さらに、大根おろしはジアスターゼという酵素を豊富に含んでおり、消化吸収を助ける作用がある。
福井のおろし蕎麦へのこだわり
福井の「おろし蕎麦」と他の蕎麦との違いは何か。最大のポイントは、福井在来種の蕎麦の実にある。
在来種は通常品種に比べ収穫量が少なく、異なる品種が近くにあると交雑してしまい、品質が安定しにくい特性を持つ。正直、栽培の苦労は絶えない。それでも、福井市内には今日に至るまで在来種にこだわり続けるお蕎麦屋さんがある。その理由は、在来種ならではの味わいにある。
福井在来種は、他の蕎麦の実と比べると小粒で少し丸みを帯びており、その小さな粒の中に魅力がたっぷりと凝縮されている。そんな蕎麦の実を、殻ごと砕いて製麺することで、ざらざらとした食感に、一般的な蕎麦より黒い麺になる。なかでも福井在来種を100%使用した蕎麦は、在来種ならではの味わい深さ、香り高さ、力強さがひときわ強く感じられ、他の蕎麦を食べた際に「蕎麦の味が薄い」と感じてしまうほどの風味を生み出す。
薬味もこだわる。冷たい蕎麦にたっぷりの大根おろしと、削り節、刻みネギを乗せて、お出汁をかけていただくのが福井市のおろし蕎麦の基本スタイルだ。店によって、大根おろしの辛さや、麺や出汁の味も全く異なる。大根おろしに、しっかりと辛さを効かせ、蕎麦全体をきりっと締めるところもあれば、蕎麦の香りを引き立てるために少し控えめな辛さの大根を使うところもある。この違いが出るのも、蕎麦自身が持つ味や香りの豊かさがあるからこそだ。
「今日はどのお蕎麦屋さんにする。」
「おろしが辛い店だけど大丈夫?」
福井人は、自分の好きな蕎麦を知っている。福井人は、蕎麦を語り、蕎麦を愛している人だと思う。おろし蕎麦の世界へようこそ。あなた好みの越前おろし蕎麦を見つける旅へご案内します。
越前おろし蕎麦おすすめ3店舗
今回は数多あるおろし蕎麦の中でも、お取り寄せでいただける「九頭龍工房」「越前蕎麦dining櫻庭」「あみだそば」の3店舗をご紹介!三者三様で、きっと自分好み、あるいは食べてほしい方好みの蕎麦に出会えるはず。
全国の蕎麦職人と研鑽した名人が作り上げる、極太田舎蕎麦!【九頭龍工房】
「ああ、帰って来たな。」 蕎麦の香りがしっかりとする麺が、慣れ親しんだ味を呼び起こす。福井に生まれて良かった。名人の蕎麦を食べながら、望郷に浸る。 蕎麦打ちの達人に言葉は不要。圧倒的な技をしかとご覧あれ。
誰もが認める蕎麦打ち職人、安久(やすひさ)名人は、超極太の田舎蕎麦を届ける。麺は通常の1.5倍はあろうかと思うほどの太さで、つるっとしたのど越しの江戸蕎麦とは違い、しっかり噛んでいただく食べ応え抜群の蕎麦。品種は福井県産在来種を使用した二八蕎麦。噛むことにより、蕎麦本来の風味が口いっぱいに広がりつつ、どこか優しさもある蕎麦だ。
名人は、そば打ち名人大会を通じて全国のそば職人と研鑽を重ねる。その技で、食べ手に合わせて、田舎蕎麦と江戸蕎麦を打ち分ける。
麺の太さに驚き
多くのそばを知る名人に聞いた「今、伝えたい蕎麦は何か」。その答えが田舎蕎麦だった。蕎麦生地に力を掛けすぎず、どこか柔らかさを感じる仕上りを目指す。田舎蕎麦の醍醐味、太麺でしっかりとした食べ応えの中に、どこか懐かしい優しさを感じることができる。
「昔、おろし蕎麦を食べたことがある方や、昔ながらの味を味わいたい方に食べていただきたい」と、安久名人。現在では珍しくなってしまった田舎蕎麦。肩に力を入れず、ただただいただく。満足感たっぷりながら、優しさも感じる。
「また、食べたいな」
田舎蕎麦を打つ、名人が今日も故郷の味を紡ぐ。
《おいしく召し上がっていただくポイント》
・ゆで時間は極太麺なので4分程度 ~途中一本食べてみて、お好みの硬さに!
・ピリッと辛めの大根おろしが『九頭龍工房流』
私がふくいさんです!
おろし蕎麦の新世界。進化し続ける魅惑の味【越前蕎麦dining 櫻庭】
衝撃的な味だった。 見慣れない淡い翠色の新蕎麦の麺を一口頬張る。蕎麦の青さが鼻奥まで爽やかに駆け、残響に、実が本来持ち合わせている柔らかな甘さが舌に残る。蕎麦を引き立たせるよう出汁とおろしは、緻密に設計され、重層的な味に調和をもたらしている。この逸品を敢えて、言葉にすると、「綺麗」だ。
「福井に来ないと食べられない味を、ご自宅でもおいしく召し上がっていただきたくて」
蕎麦打ちを担当する、広瀬江奈美さん。できるだけお店の味に近くなるよう、美味しい状態で食べてほしいという想いから、独自製法を進化させ、冷凍十割蕎麦が誕生した。
「冷凍は生めんより味が落ちるのでは」そう思われた方は間違いだ。打ち立て30分の蕎麦と、冷凍した蕎麦を比較検査したところ、弾力等の変わりもなく、本格的な味が変わらず味わえるという結果が出たそうだ。冷凍でこの味だというのが未だ信じられない。
見てわかる、翡翠色の新蕎麦と、完熟蕎麦の色の違い
こだわりの出汁は、厳選された9種類の素材から成り立つ。うまみの濃いものなので、味つけも少しにしているそうだ。在来種100%の蕎麦は農薬・化学肥料を使用せず栽培され、出汁も無添加にこだわり、お子様やご高齢の方にも安心して召し上がっていただけるものに仕上げている。出汁を飲み干すのは何となく後ろめたい気持ちを持ってしまうが、櫻庭の出汁は全て飲み干してしまうほどの美味しさだ。 「お店の常連さんに冷凍を出しても、気づかないと思います(笑)」と、広瀬さん。 本当に冷凍とは思えないおいしさだ。まずは何もつけずに、そのまま食べて蕎麦を感じ、最後はダシまでスッと飲み干して欲しい。
《おいしく召し上がっていただくポイント》
・ゆで時間は4分 ~解凍せずに、冷凍のままで茹でます
・湯通しするまでは麺を優しく扱って!
私がふくいさんです!
おろし蕎麦の玄関口、また帰ってきたくなる味!【あみだそば】
噛んだ瞬間のコシの強さに衝撃を受けました!十割蕎麦と聞いていたので、あの圧倒的なコシの強さには驚きです。それでいて、もちもち感も兼ね備えていて。もちろん、純粋に味、香りもとてもよいのですが、あの「コシ×もちもち」が忘れられないお蕎麦です!
「十割蕎麦とは思えない」
あみだそばを印象づけるのは、繊細な十割蕎麦とは思えないほどのコシの強さでありながら、十割蕎麦の持ち味である香り高さを併せ持つ、中太平打ち麺の十割蕎麦だ。在来種の蕎麦にこだわるあみだそばは、福井の玄関口とも言える福井駅に一番近い場所に店舗を構える。すなわち、来県者からは当たり前のよう美味い蕎麦を求められる。福井の看板を背負う重圧のかかる地で、あみだそばは、福井を紹介し、また訪れた人の期待に応え続ける「福井の玄関口」を担い、旅行く人に感動を与え、愛され続けている。
「どんな方に届けたいか。」
作り手の永見さんは、「蕎麦がおいしいと思ったことがない人」と答える。「この蕎麦、美味しい!」と店から溢れる声を聞く時は堪らなく嬉しいと笑みがこぼれる。
「さらに多くの方に、この感動を届けるにはどうすれば良いか」。十割蕎麦は切れやすく、自宅で調理中に麺が切れてしまうことが課題であった。自宅でもお店と同じクオリティで食べてほしいという想いからYouTubeで「あみだ蕎麦公式にゃがチャンネル」を開設した。動画でゆで方を丁寧に紹介し、文字では伝わりにくいニュアンスを伝えることができる。
自分好みのアレンジも試して、いろんな蕎麦の形でリピートしてほしい。大根おろし以外にも、とろろやかき揚げなどがよく合うそうで、自分好みの蕎麦の形を探すのには打ってつけだ。
「ただいま」
「おかえり」
色々な蕎麦を食べて、最後にまた、あみだそばに帰ってくる、お客さんも多いという。
福井の扉を開く味をぜひ、ご堪能あれ。
《おいしく召し上がっていただくポイント》
・十割の生麺なので、茹でる時間は20秒。(噴き上がってきたらOK!)
・YouTube「あみだ蕎麦公式にゃがチャンネル」ぜひチェックを!
私がふくいさんです!
ご家庭での作り方
皆さん、口をそろえて言うのが「最初熱湯に入れるまでの優しい扱い」
十割蕎麦でも二八蕎麦でもこれを守り、次の方法を試してもらえれば、ご家庭でもおいしく召し上がれることだろう。
①大きめの鍋に水を入れて十分沸騰させる。
②沸騰したお湯に1束いれ、既定の時間茹でる。
※このとき麺に火が通るまでなるべくさわらない。
③再沸騰し、蕎麦が上がってきたらやさしくほぐし、時間がたてばすくいあげる。
※火が通ったら、麺が強くなるので切れづらくなる。差し水はせずに火を弱める。
④流水で粗熱をとり、氷水でしめる。
⑤水気を切ってお皿にもりつけて、薬味や出汁を準備する。
※お鍋に残ったお湯は蕎麦湯として活用できます。
有名人も福井の蕎麦を大絶賛!
福井市食のPR大使、EXILE/EXILE THE SECONDの橘ケンチさんによる福井の蕎麦紹介動画はこちらから。
熟練の名人が打つ「極太田舎そば」。そば本来の風味を楽しめるように挽きぐるみで「太く」仕上げました。他のそばにはない噛み応えと風味。そば通の方もお試しあれ。
そばと相性抜群の大根おろしを合わせただしで食す福井の「おろしそば」。香り高い福井県産特上そば粉を使った十割そばとだし、具材をセットでお届けします。
<<ライター紹介>>
平戸 裕馬 (ひらと ゆうま):福井生まれ東京育ち。「蕎麦屋、どこ行く?」で喧嘩が起こるほど、蕎麦へのこだわりがうるさい実家で過ごす。学生時代に農家巡りで日本二周をし、日本のありとあらゆる地場の食材を食べる。現在も1日2件は農家を巡り、素晴らしい食材を探し続ける。
オランジェット橋本:少なくとも週10日はチョコレートを食べるチョコレートプロフェッショナル。特にチョコレート菓子である柑橘を使ったオランジェットへの愛は特別で、自宅で作ることも。おろし蕎麦は初心者。三重県出身。