理想の味わいを求めて 安本酒造の挑戦

 

安本酒造の酒造り

古くは城下町として栄えた、福井市の東郷地区。安本酒造は、地元・福井人の間でそのおいしさに定評がある「東郷米」の産地にあります。

注連縄が飾られた蔵で仕込むのは、代表銘柄の「白岳仙」。平安時代から続く安本家の47代目で杜氏の安本岳史さんが、これまでの酒造りを根底から見直し、新たなブランドとして2001年に立ち上げました。白山水脈伏流水を使い、山岳に面した東郷で醸す酒に、山のように人が集まりますように。そんな願いを込めて名付けた白岳仙は、透明感のある味わいの中に爽やかな香りが通り抜け、ピチピチと踊る「酸味」がほんのりと印象に残ります

私がふくいさんです!

安本酒造 安本 岳史さん

 

こだわりエッセンス

その①|福井の土地でしか作れない、唯一の味わい

白岳仙の製造に先駆けて、杜氏の安本さんは県内の米の産地を5年かけて見て回りました。県内に限ったのは「自分の目が届く範囲の原料で、お酒を造りたい」という強い思いから。安本酒造では、滑らかなのど越しとキレの良い酒に仕上がる「五百万石」ふくよかな香りと程よいうま味を生み出す「吟のさと」を指定農家から仕入れています。「酒の出来の8割を決める」という仕込み水は、蔵内の井戸で地下100mから汲み上げたもの。程よくミネラルを含んだ水は、白岳仙の透明感のあるやわらかな味わいに必要不可欠です。

 

 

「その土地で育った米と、その土地の水で醸す酒は、この土地でしか作れない‟副産物“。同じ土地で育まれた米と水を使うことで、味わいに一体感が出るんですよ」と話す安本さん。酒瓶には、福井産の米だけを使っている証「FUKUI RICE ONLY」が、さりげなく添えられています。

 

 

その②|“究極の食中酒”を支える、上質な酸味

白岳仙が目指すのは、“究極の食中酒”。これは、料理を引き立てながら、飲むたびに口とのどをリフレッシュし、無意識のうちに杯が進んでしまう酒のこと。「醸造酒である日本酒は、豊かな酸味が特徴です」と安本さん。「一般的に酸味と言うと、口の中を刺すような酸っぱさをイメージされるかもしれませんが、実はもっと複雑で幅が広い。味わいを決める重要な役割を、酸味が果たしているんです」。

仕込みに使うのは、2種類のオリジナル酵母です。一つは、バナナ系の香りとふくよかなうま味が楽しめるものもう一つは、マスカットの香りと透明感のあるキレの良さを味わえるもの。これらの酵母が仕込み水と米、蔵の環境にしずかに馴染み、白岳仙の上質な酸味を作り出しています。

 

その③|データ×伝統×感性の酒造り

2000年、現当主である安本さんが杜氏となり、原料の選定、磨き、麹、酵母、醪管理、熟成、瓶詰、保管、発送に至るまで、酒造りのすべてを根本的に見直しました。「酒造りの要となるのは、データと感性の融合です」と安本さん。伝統的な手法と、近代的なデータ管理を掛け合わせ、最後は日本酒を知り尽くした安本さんの感性をプラスする酒造り。「日々チャレンジと改良を繰り返しながら、白岳仙らしい進化を続けています」。

 

つくりて紹介

有限会社棗の里農産の石橋京子さん

安本酒造 安本 岳史さん

米蔵や土蔵、仕込み蔵などの建物が、国の登録有形文化財に指定されている安本家。両替商から造り酒屋に転身したのは1853(嘉永6)年のことでした。越前国の松平藩から藩直轄酒造業を任ぜられて以来、酒造りにひたむきに取り組んできました。「年々理想とする味わいに近づき、手ごたえを感じています。世界中のいたるところで、人種を超えて時を超えて、白岳仙が多くの人々に愛される日を夢見て、これからも福井の地で、日本酒の幅を広げる酒造りを行ってまいります」