キレとクリアな透明感を追求する常山酒造

 

常山酒造の酒造り

「常山酒造」はJR福井駅近くの市街地にある老舗の酒蔵。9代目蔵元の常山晋平さんは、200年以上続く蔵の伝統を継承しながら日本酒の新たな可能性を拓く挑戦を続けています。蔵の代表銘柄は「常山(じょうざん)」で、追求する味わいは「キレ」と「クリアな透明感」。商品ラインナップは4つのテーマで構成されています。「食との調和」は、キレのある辛口を主体とした純米、純米吟醸、純米大吟醸の3種。「地域との友和」は美山地区で契約栽培する酒米奥越地区における特別栽培による酒米を商品名に冠しています。また、「自然との調和」は春夏秋冬の季節のうつろいに合わせて発売する限定酒でその儚さや力強さを表現しており、「伝統との調和」は醪(もろみ)を酒袋に入れて滴り落ちた雫を集めた蔵のフラッグシップとなる高級酒です。

私がふくいさんです!

常山酒造 常山 晋平さん

 

こだわりエッセンス

その①|最新の環境で、最高の酒造りを

「常山」のクリアな透明感と抜群のキレ。その味わいを生み出しているのが、「酒づくりはまず環境から」という信念です。酒米は独自に改良を施した洗米機で10㎏ずつ丁寧に洗い上げ、米糠を徹底的に落とします。さらに、酒を醸すためのタンクにもこだわり、冷却装置付きの特殊なものを使用しています。このタンクは外気温の影響を受けにくく、発酵状況に応じて冷却する冷媒の温度をコントロールできるため、やさしく発酵をうながすことが可能で、酵母にストレスがかからず、滑らかな味わいに仕上がります。

しかし、「どんな設備を入れたとしてもそれを扱うのは人間であり、造り手の五感を駆使して感性を研ぎ澄ましながら酒造りと向き合うアナログとハイテクを上手く融合させながら最高の酒造りに臨みたい」と常山さんは話します。

 

 

その②|福井の酒米のポテンシャルを引きだす

「福井の酒蔵として福井の風土から生まれた酒米を使い、その土地の持つポテンシャルをお酒に反映させたい」と語る常山さん。酒造りでは、常山酒造が20年以上にわたり連携を続けてきた美山地区の契約農家が育てた「五百万石」「美山錦」「山田錦」、奥越地区の「さかほまれ」などすべて減農薬による特別栽培米を用いて醸します。中でも「五百万石」は毎年酒造りの事始めに使い、新酒の一本目としてリリース。「美山錦」は端正でシャープな酒に仕上がり、「山田錦」はふくらみのある味わいを生み出します。「さかほまれ」はきれいな甘味と常山酒造特有のキレを意識して仕込んでいます。「造りで使用する酒米は全量が福井県産米で、顔の見える生産農家や地域との繋がりを大切にしています。その酒米一粒一粒を純米造りによって丁寧に醸しております」。

 

その③|年4回発売するお酒で、四季のうつろいを表現

商品ラインアップが豊富な常山酒造は季節限定酒も魅力です。11月上旬にピチピチと弾ける搾りたての新酒2月4日の立春にはフレッシュかつジューシーな躍動感に溢れた無濾過生原酒が登場。厳しい暑さの峠が過ぎた処暑の頃には、シャープさと濃密な米の旨味が共存した酒、そして12月と3月には搾りたて原酒を瓶内二次発酵させたにごり酒がお目見えします。その季節だけの特別な1本を探しに、酒蔵を訪れてみてはいかがでしょうか。

 

つくりて紹介

常山酒造 常山 晋平さん

常山酒造は福井市内では最も長い歴史があるまちなかの酒蔵です。常山家は福井藩公認の両替商として栄え、江戸時代末期の1804年に酒造りを始めました。1945(昭和20)年の福井空襲、1948(昭和23)年の福井地震により2度にわたり蔵を焼失。その度に愛飲家の支えがあり、復活を遂げてきました。かつての常山酒造では長らく「羽二重正宗」という地元流通の銘柄がメインでしたが、7代目が銘酒としてその名がとどろくようにとの想いを込め「常山」を発表しました。その後、夢半ばで7代目が急逝。母である8代目がバトンを受け取り、父母の意志を受け継いだ9代目の常山さんは、杜氏として酒造りを磨き上げると共に、ブランディングの一環として酒のラベルを当初の書体に統一し、クールなデザインに一新。さらに、「魅せる酒蔵」をテーマとして、蔵1階の製造空間をリニューアルし、2階もイベントやテイスティングなどに使える多目的スペースに生まれ変わらせました。「2024年には創業220年を迎えます。これからも初心を忘れず、革新的でありながら本質的な酒造りにまい進してまいります